あなたのランプの灯は...

会長 菊池 正光 

「あなたのランプの灯を いま少し高く掲げて下さい。見えぬ人々の行く手を照らす為に・・・」
これはヘレンケラーの語った言葉です。私は最近このヘレンケラーの言葉がピッタリするような体験をすることができたと思います。そのことを思いつくままに書いてみたいと思います。
 ひとつは車椅子利用の方々といっしょに鶴ヶ城の天守閣に登った時のことです。会員の車椅子利用の彼女の「私 お城に登ってみたい」というさりげない一言が多くの人の「夢を実現させてあげたい」という心を動かしたのではないでしょうか。
 総勢88名の参加を得て、7名の車いすの方々と最上階に立つことができたのです。近くてもっとも遠いところであった天守閣、ボランティアの方々のランプの灯があったからこそ実現することができたのです。
 もう一つは三島町の森の校舎「カタクリ」でのキャンプ体験での時でした。小学校の廃校になった校舎に手を加え、宿泊できる体験学習の場とされたのです。私たちの会で利用させていただきました。校庭でのバーベキューの際などには、その料理の準備をして下さった町の人たちも一緒に歌に入ってくださり、踊りまで踊ってしまいました。町の人たちの暖かいランプの灯があったからこそ、楽しいキャンプを過ごすことができました。型にははまらない自由な雰囲気に包まれて、心地よい愛の一日を過ごすことができました。
 今日の日本は物質的には豊富になりました。しかし反面、人と人とのふれあいが希薄になってきたともいわれます。確かにそうかもしれません。逆にこんな時だからこそ、物ではない人間としてのふれあいが必要なのだと思います。
 この二つの体験を通して心からのふれあいがあったとき、素晴らしい感動に出逢うことを確信しました。

「めざせ鶴ケ城 登ろう天守閣」が
多くのボランティアに支えられて無事に終了

障害者の明日を考える会のメイン行事の一つ「めざせ鶴ケ城 登ろう天守閣」が多くのボランティアに支えられて無事に終了しました。ボランティアの皆様本当にありがとうございました。車椅子使用会員の夢が大きな愛の手によりかなえられました。

去る、6月20日(日)雨の降る中7人の車椅子の友と天守閣へ登りました。この企画は一人の車椅子使用会員の「私 お城の天守閣へ登ってみたい」という一言から「それでは その夢をかなえよう」と始めたものでした。何年か前に郡山市のひまわり号で行われたことはありましたが、車椅子に乗ったままで天守閣に登るというのは、今回が初めてのことだと思います。前例がないだけに手探りの状態で、恐いもの知らずの計画であったかも知れませんが「あさやけ山岳会」(会長 鈴木 公)の皆さんのご協力でリハーサルを行い「これならうまくいく」と確信を得ました。 

 その後綿密な打ち合わせを何度もおこない、あとはボランティアの募集・・・・・東北電労委員長(阿部 貢さん)より、連合福島会津連合のことを教えていただき、ご協力の約束ができました。 (ほっとした瞬間胸が熱くなった)その他にFMあいづ、あんぐる、ヴォイス、サンデーあいづ、福島民報、福島民友、産経等のマスコミに取り上げていただき、それらを見た方々の協力の申し込みで、うれしいことに80名近くの愛の手が集まりました。

 そのなかで 忘れられないのは「俺、百姓で車椅子のことは何も分からないが、力はある。車椅子は持てるから協力します。」という河東の方からの電話です。最初の電話だっただけに印象に残っています。その他に喜多方の方、郡山のかた、白河の方…老若男女いろいろな方から愛の電話が…

 当日(6月20日)はあいにくと大雨になってしまったが、誰からも中止の声がなく決行となりました。今まで見上げていた天守閣に今登る… はやる気持ちを押さえ車椅子の持ち方の研修・視覚障害者のガイドの仕方の研修をおこない、いざ天守閣へ。

 車椅子の方の気持ちは… 心の中は… 一層から二層、そして五層頂上へ…「うわー上から見るってこうなんだー」「すごい!!下に人が小さくみえるー」「他の車椅子の人にもみせてやりたい…」無言のままじっと一点を見つめる人、それぞれの思いが胸を過ぎったことと思います。

 実は、その無言だった人の一人、増子さんの思いは又格別なものがありました。増子さんは26歳頃に天守閣建築工事に加わり、三層の南側の壁塗りを担当したそうです。 その後不慮の事故により車椅子の生活になり二度と登ることはないと思っていたそうです。この「めざせ鶴ケ城登ろう天守閣」の企画を聞いたときは「まさか?」と思い、さらにおんぶや抱っこの苦手な増子さんは車椅子のままで… という話に「本当がよ!!では世話になってみっか」と、参加の意志を示したということでした。当日の雨の中(今日登れなかったら本当に夢で終わってしまう。雨よやんでくれ)と、心の中で願ったといいます。

聞き手:増子さん天守閣からの眺めはどうでしたか?
増子 :景色もすばらしかったが・・いろいろなことがあたまにうかんで…
   (しばし無言)
聞き手:そういえば増子さんは、若かりしころ天守閣のこうじにかかわったそうです
   ね。どのあたりですか?
増子:三層の南側の壁を塗ったんだよなァ。屋根の下のところというか あのころは
   俺も26,7歳ころで若かったし 足もあったしなァ。(笑い)
聞き手:天守閣に登った日、自分で塗った南側の壁を見た時の気持ちは?
増子:何回もお城へは行っていたが、天守閣を登るなんて考えても見ないしできない
   ことだと思っていたので、あー本当に登ったんだなーと思ったトタンに胸が熱
   くなって目を閉じてしまった。あの時の気持ちは言葉では言い表わすことはで
   きないなァ。(無言・・その後ぽつりぽつりと・・)
   ボランティアの人の歩く足音を聞きながら、昔の自分の姿が、自分の足で歩い
   ている姿が目に浮かんで… 二度と登ることはないと思っていたのに、天守閣
   に登れるなんて・・ 
   これが自分の足でならとの思いがちょっとあったりして…でもボランティアの
   人たちが雨にぬれながら必死で自分を頂上まで連れていってくれることに言葉
   にできない熱いものがあって感謝の気持ちでいっぱいで… 登ったということ
   も感激だったがそれよりも何よりも暖かい人の心に感動した。
   本当にありがとうございました。
   (そして最後に又、やっぱり人は心だよなァーと…)
   障害者の明日を考える会ってすごいなァ、
   こんなこともやってしまうんだから…

増子さんはしばらく遠くの方を見ているような目をしていましたが、ポツンと「まさか 登ったなんて…」とつぶやいた。そして再びボランティアの方々の暖かい心に深く感謝していました。 その時の増子さんはあの26〜7歳のころに戻って天守閣の壁を塗っている自分の姿に思いをはせていたのでしょう。
 企画担当者としては、いろいろな不安もあったが・・この企画ゲット!! 本当にやって良かったァーボランティアの皆さん 大きな愛をそして夢を!! ありがとうございました。

増子:熊田さん この次は磐梯山登山ガァー
聞き手:エッ ! ! ナッナヌー 磐梯山登山だと!! ダァー(ずっこけ)

「増子さん いつになるか約束できませんが 待っててくださいネ」という気持ちが
うかつにも私の胸に起こってしまったのだ…。  あーどうしよう… まづいなこの気持ち…

当日おいでくださったボランティアの方々の感想の中から


 雨の日は車椅子の人たちは大変なんですね。傘を差すことができないから。傘を差しかけるボランティアもあることに気がついた。このようなことは、ひとりではできないんだよね、人の和コミュニケーションが大切。参加して本当に良かった。また協力したい。 このイベントに参加して人と人の和、心づくりに触れたような気がした。 車椅子介助盲人ガイドヘルパーの仕方を学べたのも良かった。 雨が降っていたからこそ心を一つにすことができた。 桜の花の咲くころにもう一度やりたい。

                        車いす使用者 大竹 京子
「私 お城に登ってみたいなぁ」 何気なく言ったことがまさか本当にかなうなんて、思ってもみませんでした。やっぱり「障害者のあすを考える会」ってすごいかいですよね。6月20日いよいよその日がやってきました。あいにくの雨となってしまいましたが、雨の中の出発です。 ボランティアの方々が私たちのために一丸となって、天守閣へと長く狭い急な階段を車椅子ごとあげてくれたのです。一人のかたが、「さあ、ついたよ」って言ってくれて、ついに天守閣からしたを見下ろすことができたのです。夢がかなった瞬間、胸が熱くなりました。天守閣から見下ろした周りの緑の鮮やかさや、霞のかかった町並み、そしてなにより風がとても優しかったことなど、感動で胸がいっぱいです。 まだ、一度も登ったことのない人たちが大勢いると思いますが、その人にもあの感動を味わってほしいと思いました。最後になりましたが、スタッフのみなさん、企画・実行するに当たり、大変なご苦労があったことと思います。本当にありがとうございました。そして賛同してくださったボランティアの皆様、雨の中本当にありがとうございました。

                         車いす使用者 大竹 公
車椅子で登った天守閣、会津に在住していながら、車椅子使用者にとっては未踏峰適名存在であり、いつも上を眺め羨望でもあった鶴ヶ城にたつことができた。当日はあいにくの雨模様であったが、会津盆地を一望できる展望台での大パノラマ、空気の清々しさ、 言葉では言い表わすことができない最高の幸せを味わうことができました。この展望台での大パノラマを、今回参加することができなかった大勢の車椅子使用者に、この感動を分けてあげることができたらと思います。「私 お城に登ってみたい」の一言がきっかけとなり、実行してくださった実行委員会の皆さん、遠くは二本松・郡山・白河から、また「百姓だけれど力はあるから」と
参加してくれた、80余名のボランティアの皆さんの愛の力で展望台にたつことが出来ました。雨の中本当にありがとうございました。

                         車いす使用者 吉田千恵子
この度、私共車椅子利用者が天守閣に登る際は大変お世話になりました。車椅子のまま天守閣に上がれるなど思ってもいませんでしたので、本当にうれしかったです。一番上からの眺めはなんともいえませんでした。
ボランティアの皆様にも親切にしていただき、雨にぬれながら一生懸命車椅子を押してくれたり、申し訳なさでいっぱいでした。本当にありがとうございました。感謝申し上げます。

                         車いす使用者 独古啓子
天守閣に登って車椅子のまま天守閣に登れるなんて思ってもみませんでした。それが皆様のおかげで現実となり本当にうれしかったです。私たちのために、こんなにたくさんのボランティアのかたに参加していただき感激致しました。皆さんに支えられて登った展望台からの眺めは最高の景色でした。日が経つにつれ、登ったという実感に浸っております。本当にありがとうございました。

すばらしい心のバリアフリーにふれた一泊二日
バリアフリー・サマーキャンプ 森の校舎「カタクリ」

 障害者の明日を考える会では、7月17日・18日の両日 大沼郡三島町西方にある三島町生涯学習センター森の校舎「カタクリ」で、バリアフリー・サマーキャンプを行った。参加者は23名 会員と準会員そしてボランティア2名・・・
 三島町はさぞかし涼しいだろうと思っていたが、さにあらず けっこうな暑さでしたが、参加者は日頃の運動不足を解消しようと、卓球・バスケット・フライングディスク等のスポーツに汗を流した。スポーツのルールは少しアレンジして、障害の区別なく皆さんが楽しめるよう工夫して行った。
 夜は西方のご婦人方の準備して下さったバーベキュー舌づつみをうち、飲み歌い踊り(?)と日頃のストレスをすっかり解消した。二次会の会場を体育館へと移し、新しい会員・新しい準会員・ボランティアの方々に少しでも障害者の明日を考える会を知っていただくべく、発足当時から会の行事等を想い出話を交えながらの報告会も行った。 参加者全員が心ひとつになって話し合うことができたのは、会にとって大きな収穫だったのではないでしょうか?

森の校舎カタクリには、心のふれあいがあった。

 この度のサマーキャンプには、まさに心のバリアフリーであった。森の校舎「カタクリ」大沼郡三島町西方の小学校が廃校になったのを機会に内部改造し、生涯学習センターとして生まれ変わったところです。
1階にハンディキャブの部屋が1つと車いす用トイレ障害者対応の浴室があり、車いすの方でも安心して宿泊できる所です。欲を言えばメーンの宿泊室が2階なので、2階までのエレベーターか昇降機・車いすトイレがあればと思いましたが・・ 森の校舎「カタクリ」には、それ等にも勝る暖かい心があったのです。
このサマーキャンプには車いす使用者が5人参加しておりましたが、トイレのことを考え1階の談話室に特別に寝室を作って下さったのです。その上、校舎から体育館までには館長(私たちは校長先生と呼んでおりました)さん手作りのスロープがありました。「おいで下さったお客様に少しでも快適に過ごしていただく為に・・・」という配慮からです。車いすトイレの壁は淡いピンク色・・・ これも広いトイレが少しでも暖かく感じるようにとのことだそうです。
 森の校舎「カタクリ」にはもう一つ自慢できる心のバリアフリーがありました。それは地元のご婦人方で組織された「カタクリ会」です。森の校舎に宿泊されるお客様に手作りの食事をだして下さいます。それも、自分の畑で穫れた野菜を使って・・・
 私たちはいつになく話がはずみ夕食の終わりの時間に遅れてしまいましたが、校長先生・カタクリ運営委員の方・カタクリ会の方、最後までお付き合い下さいました。あの人柄はどこから生まれるのでしょう。一人一人の心の中にバリアフリーが自然に生まれ、地域の中にある向こう三軒両隣の地域ボランティアが今なお引き継がれているのでしょうか。
 また行こうと思わせる手作りの心のバリアフリーある森の校舎「カタクリ」でした。帰るとき目に涙を浮かべ、手を振って見送って下さった校長先生・カタクリ会の皆さま、お世話になりました。


編集後記

今年の夏は毎日35℃以上で息も絶え絶え、「どーなっているの! ! 」と言いたくなる毎日ですが、みなさんお元気でしょうか? 夏バテしてませんか? 食欲のわく、生つばゴックンの「熊田 お料理教室」の記事があったのですが、御免なさいね・・・ボツにしてしまいました。食欲の秋にでもお願いしますね。 次回特集は「講演会」「料理教室」などとなってます。ご期待下さい! !

編集委員 渡部・熊田・吉田・竹内・小沼